【SDGs】わたしたちのゴール設定に欠けているもの【幸福】

教養

はじめに

近年、日本では大規模な豪雨や台風による被害が増加しています。

これには地球温暖化が大きくかかわっていると考えられています。

気象庁はこのままの状況が続くと60年後には平均気温が4℃近く上昇すると発表していますし、環境省は2100年には最高風速90mの台風がやってくることを予測しています。

(参考:「2100年未来の天気予報」環境省https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/2100weather/

風速90mといえば、新幹線の最高速度並みですし、これは鉄筋コンクリートも含めて建物が吹き飛ぶ威力です。

そういった温暖化による被害を避けるために現在目指されているのがカーボンニュートラル(実質的な温室効果ガス排出量を0に)であり、国際社会において2030年までに目指すべきゴールが設定されたものがSDGs(持続可能な開発目標)です。

世界は今、SDGsの17のゴールに向かって進んでいます。

しかし今回はあえて、SDGsを批判していきます。

記事のタイトルにもある通り、

わたしたちのゴール設定は本当に正しいのだろうか

ということです。

そして、ゴールについて批判するのであれば、新たなゴールを指し示すのが筋というものでしょう。

後半部分では、私たちの目指すべき本当のゴールについて述べていきます。

SDGsの目指すもの

SDGsの和訳は「持続可能な開発目標」です。

SDGsは英単語の頭文字をとったものですので、もとの形を詳しく見ていくと、

Sustainable=持続可能な

Development=開発

Goals=目標

となっています。

本記事の冒頭で、温暖化の進行による異常気象に関する予測を紹介しました。

そういった予測からわかる通り、現在の社会はSustainable(持続可能)ではありません。

このままの生活を続けていけば、地球は私たちの住むことのできない星となってしまうでしょう。

ですので、Sustainableという文言は、これからの世界を構想していくうえで重要なものであるといえます。

それでは次に、Development(開発)について考えましょう。

Developmentとは、開発・発展・進歩を意味する言葉です。

つまり、Developmentは”成長”を前提としているといえます。

ここで問いたいのは、

これ以上の成長は必要か?

ということです。

近年の日本(多くの先進国)では、”低成長”の状態が続いています。

これに対し、「国民が等しく成長の果実を享受できる新しい資本主義を創る」と宣言したのは岸田文雄首相です。

このことが示しているのは、SDGs我が国の行政はともに”成長”を前提としているということです。

ここで「経営の神様」と称される、パナソニック(旧松下電器産業)の創業者・松下幸之助の言葉を紹介します。

生産者の使命は貴重な生活物資を水道の水のように無尽蔵に提供し、貧を除くことだ

これは、松下幸之助が松下電器の創業にあたり、宣言したもの(通称:水道哲学)です。

現在、わたしたちは人類史上最も多くの生活物資に恵まれ、たくさんのものが捨てられる世の中に生きています。

つまり、「水道哲学」でいうところの”貧”は除かれた状況であるといえます。

このような局面においては、「水道哲学」が示しているような生産者(ビジネス)の使命はすでに達成された可能性が高のではないでしょうか。

近年の”低成長”は、なにも”衰退”を意味しているのではなく、わたしたちが人類の発展という長い坂道を登り切り、”高原”にたどり着いたことを意味しているのではないかということです。

そして、この前提に立つと近年の”低成長”へのわたしたちの正しい反応は、”衰退”を悲しむことではなく、”高原”への到達を祝福することであると考えられるのです。

つまり、

物質的な豊かさが達成され、安定した生活基盤が十分に確保されている現代において、これ以上の”成長”を目指すことは正しいといえるのか?

ということが問われているのです。

無限の開発・成長は可能か

SustainableDevelopmentは共存することのできない概念なのではないでしょうか。

これはつまり、「持続可能性無限の成長を手放した先にこそ存在しているのではないか」ということです。

世の中には、「テクノロジーの力によって地球温暖化を食い止めよう」と考える方も多くいらっしゃいます。

しかし、それらの技術の研究・開発には莫大なコストがかかりますし、テクノロジーを開発したところで、地球規模の環境問題を解決するためには相当な規模の設備を生産せねばなりません。

テクノロジーに頼ることそれ自体が地球環境に負担をかけるということです。

また、平均気温の上昇や風速90mの巨大台風の到来まで、もう数十年しかないということにも注意が必要です。

わたしたちに求められているのは、現在の生活スタイルを貫き、無限の成長を目指すことではなく、今この瞬間にSustainableな生活様式について1人ひとりが本気で考え、生活様式を刷新していくことなのです。

問題を将来世代に先送りするのはもうやめにしましょう。

問題の解決を技術まかせにするのはもうやめにしましょう。

北極や南極の氷が解けてしまってからでは手遅れなのです。

SDGsのゴール設定は正しいのか

ここからは、私たちの目指すべき本当のゴールについて考察していきます。

前述の通り、Sustainableという方向性は、これからの世界を構想するうえで欠かせないものです。

現在の生活を続けていけば、取り返しのつかない事態になるでしょう。

そして、Developmentという方向性は少々怪しいのではないかということについても述べてきました。

これは、持続可能性無限の成長が両立しえないものであると考えられるためです。

つまり、成長を手放した先にこそSustainableな未来があるのではないかということです。

現在の社会システムは資本主義を中心に回っています。

資本主義には、「良いものをより安く」「消費が経済を回す」「無限の成長」などという構造が内在しています。

良いものをより安く」という哲学は、わたしたちの社会を豊かにしました。しかし、この構造の中で多くの儲けを得たい場合は、大量生産・大量消費のシステムを構築するしかありません。

消費が経済を回す」とはよくいわれるものですが、これには「本当は10万時間もつ電球を作ることができるのに、1000時間もつものしか売ってはいけない」という問題が付きまといます。壊れないものを作ってしまっては、商品が売れなくなり、不況が訪れるのです。つまり、わたしたちはあえて壊れるものを生産し、それを購入するために必死になって働いているのです。このシステムの下で、地球環境をいつまで保てるのでしょう。

無限の成長」というのは、上の2つのシステムをかけ合わせたようなものです。「良いものをより安く」 というシステムの中で多くの儲けを得たいのであれば、規模を拡大していくしかありません。「消費が経済を回す」という資本主義の哲学の下では、新たな需要を生みだし、供給し続けるしかないということです。そうして、わたしたちの社会は急速に発展してきたのです。しかし、わたしたちの生活環境としての地球は、このシステムにどれだけ持ちこたえることができるでしょうか。

繰り返しになりますが、わたしたちにこれ以上の成長は必要ないのかもしれないということなのです。

目指すべき本当のゴール

ここまでは、Development(開発・成長)はわたしたちの目指すべきゴールとはいえないのではないか、ということについて考察してきました。

それでは、わたしたちの目指すべき本当のゴールとはどのようなものなのでしょうか。

Sustainableを追い求めていくことだけが、わたしたちのゴールなのでしょうか。

…それは違うと、僕は思います。

なぜそう考えるかといえば、わたしたちにとって、まだ達成できていない課題があるためです。

それは、”幸福”の課題です。

近年、”幸福”が科学的に測定可能なものとなってきました。

そういった「Well-being(ウェルビーイング)」に関する研究は活発になってきており、我が国では2021年の成長戦略に「ウェルビーイング」が記載されました。

Well-being研究の課題意識はこうです。

戦後日本の物質的な豊かさ(GDP)は何倍にも伸びたにもかかわらず、ウェルビーイングは上昇せず、近年はむしろ低下している。

つまり、経済成長の先にあるものは”幸福”ではなかったということです。

ここで、考えてみてください。

わたしたちの目指すべき本当のゴールは、「無限の経済成長(Development)」でしょうか。それとも「人々の幸福(Well-being)」でしょうか。

その答えは、明らかに「人々の幸福」であるはずです。

だからこそ、Developmentに代わる新たなゴール設定としてWell-beingを提案し、今後も”幸福”に関する情報を発信し続けていきたいと考えています。

まとめ

今回は、「わたしたちの目指すべき本当のゴール」について考察してきました。

本記事での答えは、Sustainableであり、Well-beingです。

環境問題が手遅れになる前に、わたしたち1人ひとりが行動を変えていかなければならないのです。

そして、”幸福を手放した成長”に意味などないということについても理解しておかねばなりません。

Well-beingに関して言えば、”幸福”を科学的に測定できるようになったことが大きなターニングポイントとなっています。

このことは、「幸福”が宗教でも自己啓発でもなく、”科学”として大真面目に議論される時代がやってきたこと」を意味しています。

これからのわたしたちが目指すべき未来は、「物質的な豊かさ」ではなく「幸福な人生」なのです。

幸福”に向けた歩みを進めていきましょう!

それでは!ありがとうございました!

【参考文献】

「ビジネスの未来」山口周 2020

「世界で最も貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉」佐藤美由紀 2015

「日本人の勝算:人口減少×高齢化×資本主義」デービットアトキンソン 2019

「僕は君たちに武器を配りたい」瀧本哲史 2011

「シンニホン」安宅和人 2020

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