はじめに
「さすが!仕事が早いね!」
「いやいや、そんなことありませんよ!」
こんな会話は日常の中で多く見られます。
褒められたことに対して、謙虚に答える。
これはまさに、日本の美徳のようなものです。
しかし、この”謙遜”は、ときに望ましくない効果をもたらします。
ここでいう「望ましくない効果」とは、会話を進める上での対人関係に関するものではありません。
あなた自身の問題として、考えていただきたいのです。
今回の記事では、”謙遜”がもたらす悪影響とは一体どのようなものなのかを明らかにします。
そして、後半部分では”謙遜”に対する考え方を変えることで得られる効果についてご紹介していきます。
謙遜という文化
前述の通り、”謙遜”とは日本の美徳のようなものです。
謙虚さを良しとし、傲慢さを否定する。
これは、我が国の国民性イメージにも合致しています。
それでは、わたしたちはいつごろから謙遜をし始めるのでしょうか。
幼稚園や保育所、小学校に通っていたころ、先生から
「自分のものは自分で片付けられていて偉いね!」
と言われ、
「いやいや、そんなことありませんよ!」
と答える子はなかなかいないでしょう。
実際には小学校高学年あたりで敬語の学習をしますから、日常の中でなんとなく耳にする以外ではここが大きなポイントとなっています。
そして、中学校では先輩・後輩という縦の関係の中で、少しずつ敬語を身に着けていきます。
そうした中で、わたしたちは謙遜し始めるのでしょう。
教育以外の面から考えれば、周りの大人たちの会話の中から「褒められたときは素直に喜ぶべきではない」ということを感じ取っていくのです。
そうして”謙遜”の文化は受け継がれていきます。
謙遜しない文化
僕がアメリカの大学を訪れたときの話です。
そこには先進的な研究や活発な取り組みなど、素晴らしい実践が多くありました。
そこで僕は、「素晴らしい研究ですね」と現地の教授や学生に伝える機会があったのです。
それを聞いた彼らは「いやいや、そんなことありませんよ」などと”謙遜”はしませんでした。
ただ誇らしげに実践を紹介してくれたのです。
僕は、「これが本来あるべき姿なのではないか」と感じました。
賞賛の先にあるべきは”謙遜”ではなく、”誇らしさ”や”喜び”であるべきだと思うのです。
これを言うと、「日本には”お世辞”という文化があるから素直に受け止めるべきではない」と考えられる方がいらっしゃるかと思います。
確かにその通りです。
しかし、相手の賞賛が”本音”なのか”お世辞”なのかを見分ける術はありません。
それならば、すべて素直に受け止めるべきなのではないかと思うのです。
これは、すぐにはご理解いただけないでしょう。
しかし実際、僕は「謙遜しない」ということを心がけて生活しています。
ここからは、なぜそのようなことをするのか、「謙遜しない」ことで得られるメリットについてご紹介していきます。
謙遜は保険にすぎない
僕は、「謙遜=保険」であると考えています。
「仕事が早いね」に対して答える「いやいや、そんなことありませんよ」は、仕事が長引いてしまったときの逃げ道を作っているように思えてならないのです。
逆にいえば、「仕事が早いね」に対して「ありがとうございます!」と答えることで、あなたは「仕事が早い人」という役を演じ始めなければならなくなるということです。
そして、僕が「謙遜しない」という生き方を選択した理由もそのためです。
逃げ道を作らず、より良い自分を目指して前進していく。
このスタートラインに立つ行為が、「謙遜しない」という選択なのです。
もしも「仕事が早いね」がお世辞だったとしても、賞賛を素直に受け止めた先にあるのは「仕事が早い自分」というビジョンなのです。
安易に逃げ道を作ってはいけないということです。
賞賛をあなたの”強味”として売り出していこうという強気な姿勢をもちましょう。
「そんなことありませんよ」を聞いているのはあなた自身
あなたが発した「いやいや、そんなことありませんよ」は誰に向けた言葉であるのか。
これは当然、会話している相手のように思ってしまいがちですが、実は違います。
あなたの言葉を誰よりも聞いているのは”あなた自身”です。
”謙遜”は逃げ道を作る行為であるということは、これまでも述べてきました。
この逃げ道とは、他者からの期待を避けるというものではなく、あなた自身に「できない自分」というイメージを刷り込んでいく行為なのです。
他者の期待から逃げてはいけません。
そしてそれ以上に、
あなた自身に「そんなことない自分」「できない自分」を刷り込んでしまってはいけないのです。
できるかできないかがわからないのなら、「できる自分に賭けてみないか?」ということです。
まとめ
今回は、
”謙遜”があなたに逃げ道を作り、期待を避け、「できない自分」を刷り込む行為になる
ということについて述べてきました。
僕は、今回ご紹介したアメリカの大学での出会いをきっかけに、「謙遜しない」という生き方にシフトしました。
適度なプレッシャーを自らに課し、期待を背負い、「できる自分」を演じることで、成長へのきっかけを得られたことを実感しています。
僕は、大学2年の1月1日から「謙遜しない1年」を実験的にスタートさせ、あまりにも大きな効果を感じたことから、1年で終了することなくライフスタイルとしてこれを取り入れ、もう5年近く実践しています。
まずは「1週間」や「1か月」など、小さく始めてみてはいかがでしょうか。
ただし、「そんなに短い期間で賞賛されることなんてなかなかない」と思われるのなら、「謙遜しない1年」を作ってみることをオススメします。
あなたが”謙遜”しなかったところで、失うものはなにもありません。
あなたが思っている以上に、周りの人々はあなたの言動を気にしていないのです。
「実験してみる」くらいの心持ちで、気楽にやっていきましょう!
それでは!ありがとうございました!
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