はじめに
「良いものをより安く」
現在のわたしたちの社会は、そういった資本主義の理念に基づき、より安価で高品質なものを提供しようという発展への道を進んでいます。
より安い値段で良いものが手に入るようになるのですから、消費者であるわたしたちにとって大変喜ばしいことです。
ただし、売り手の立場から見れば、これは良いことばかりではありません。
例えば、牛丼。
大手牛丼チェーンの価格競争は熾烈なものです。
それぞれのチェーンで多少の味の違いはあれど、消費者が求めているのは
「美味い牛丼をより安く」
ということですから、この価格競争は生き残りをかけた厳しい戦いなのです。
”価格が下がる”ということが何を意味するか。
それは、大きな儲けを得ることが難しくなるということです。
もしあなたがビジネスにかかわる方であれば、この道は避けるべきでしょう。
今回の記事では、そういった「ビジネスと競争」の関係について述べていきます。
そして、後半部分では「あなたと競争」に焦点を当て、「決してあなたを安売りしてはいけない」ということについて、述べていきます。
値下げへの道
「牛丼の値下げ」に焦点を当てて考えていきましょう。
値下げの方法としては、どのようなものがあるでしょうか。
まず考えられるのは、食材の仕入れ値を下げることです。
しかし、これには限界があります。
原価の低さは品質を低さにもつながりますし、仕入れ先の利益を考えれば無理はできない部分でしょう。
そこで、次に考えられるのは効率化です。
さまざまな機械やICT機器の導入、システムの改良により、最大限の効率化が図られます。
しかし、これにも限界があります。
どれほど効率を高めたところで、牛丼の注文から提供までのスピードには限度がありますし、現在でも相当なスピード感で牛丼が提供されているのはご存じの通りでしょう。
そこで、最後に削られるのが人件費です。
「良いものをより安く」という資本主義の哲学の行き着く先は、「低賃金・低付加価値」的な労働なのです。
効率化されたタスク(機械的なタスク)をただ淡々とこなす。
かつて、ウィリアム・モリスが「アール・アンド・クラフツ運動」で産業への人間性の回帰を目指したように、わたしたちにとってこの道は避けるべきものなのです。
競争の行き着く先
「良いものをより安く」という競争に巻き込まれたもの・人は、例外なく熾烈な価格競争を強いられます。
より多くの稼ぎを得たいのならば、より多くのものを生み出すしかない状況に追い込まれるということです。
安いものを生み出しているのですから、大きな価値を生み出すには長時間労働や大量生産が必要となり、次第に過酷な状況に追い込まれていくといえるでしょう。
ここでいう「良いものをより安く」という”競争”には、商品だけでなく、”人材”としてのあなたも巻き込まれていきます。
この道が険しいものであるということは、前述の通りです。
つまり、私たちが意識しなければならないのは「競争してはいけない」ということなのです。
”狭き門より入れ”という言葉があります。
この言葉は、
「難しいところ(難関)に進め」
と、より難易度の高い学校や企業へと進むことを示しているように解釈されがちです。
しかしこれを、
「競争する相手がいないところへ進め」
ととらえれば、私たちの生き方に重要な示唆を与えているといえるのではないでしょうか。
例えば、「ブログ」という分野は多くの競争相手がいますが、「ブログ×釣り」とジャンルを絞れば競合は減りますし、「ブログ×釣り×天ぷら」と特化していけば、自然とあなたしか生み出すことのできない”価値”を売り出すことができるようになるのです。
”競争”するのではなく、あなたにしか生み出せない価値を目指しましょう。
誰もが進むような道へ進み、自分を”安売り”してはいけないのです。
まとめ
今回の記事では、資本主義に潜在的に埋め込まれた哲学「良いものをより安く」について考えてきました。
消費者目線では、これは嬉しく好ましいものですが、生産者・働き手としての視点をもつと、このことは厳しい戦いの道へと進むことを意味しています。
自分を”安売り”し始めると、行き着く先は「低賃金・低付加価値」という労働となります。
これは、機械的なタスクをただ淡々とこなしていくような道です。
そして、この方法で多くの収入を得たいのであれば、人間性を失った労働を余儀なくされます。
この道へと陥らないための唯一の道は、「あなたにしか生み出すことのできない価値を提供すること」です。
言葉だけでは難しく感じられるかもしれませんが、「ブログ×釣り×天ぷら」という例をご紹介したように、
複数の分野に軸足を置き、数少ない人材を目指そう
ということなのです。
さて、あなたの軸足を置いている分野は何ですか?
その他に、あなたの得意とすること、所属している集団にはどのようなものがありますか?
これらを組み合わせることで、あなたならではの価値を生み出す可能性は無限に広がっているのです!
それでは!ありがとうございました!
【参考文献】
「シンニホン」安宅和人 2020
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