【本当にコロナ以前の世界に戻りたい?】アフターコロナの正しい構想

教養

はじめに

テレビを見ていると、マスクなしの映像が流れる。

「あぁ、コロナ前の映像か…」誰もが感じたことがあるではないでしょうか。

このまま「With コロナ」の状況が続けば、今の高校生は友達の顔(マスクなしの表情)を知ることなく卒業を迎えるのです。

わたしたちは、いつになったらコロナ以前の生活に戻れるのでしょうか。そういった疑問は、世の中にあふれています。

しかし、今回はあえて「わたしたちは、本当にコロナ前の日常に戻りたいのか」を考察していきたいと思います。

「戻りたい日常」とはいったいどのようなものを指しているのでしょうか。

  • マスクをしなくてもよい
  • 自由に移動し旅行へ出かけられる

このあたりは、真っ先に思い浮かぶでしょう。他にも、様々な思いがあることかと思います。

それでは、こちらはどうでしょう。

  • 少しくらいの発熱や風邪症状では、仕事や学校を休むことはできない
  • 在宅勤務がなかなか認められない

上述の4つの例はすべて、コロナ以前の日常を表しています。

どうやら、わたしたちは「コロナ前の日常」を完全再現したいわけではなさそうです。

わたしたちの目指すべき「コロナ後の世界」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

ともに考えていきましょう。

この事態は、一つの「きっかけ」

わたしたちが本当に議論すべき問題は何でしょう。

その答えが、「コロナ以前の日常を完全再現する方策」でないことは明らかでしょう。

このことについて、山口周さんの著書「ビジネスの未来」より引用します。

コロナ以前の世界が非の打ちどころのない素晴らしいものだったと考える人は世界に一人もいないはずです。であれば、私たちがいま考えなければならないのは、この事態を一つの「きっかけ」として捉えたとき、コロナ後の世界を、どのようにこれまでとは異なるものとして構想しうるのか、という問題のはずです。

山口周さんの著書「ビジネスの未来」より

この指摘は、「コロナ以前の日常を取り戻す」ではなく、「コロナ後の世界をこれまでとは異なるものとして構想する」、そういったマインドチェンジが必要であることを示唆しています。

同じく「ビジネスの未来」の中で語られていることですが、コロナ以前の世界がどのような文脈にあったのかを正しく認識することが大切なのです。その文脈が、素晴らしいものであったのならば、「コロナ以前の世界を取り戻す」という議論には確かに意義があります。

しかし、わたしたちが真に目指すべきコロナ後の世界は、このコロナ禍で生まれた新たな価値観「密な空間よりも疎の空間のほうが良い(開疎化)」「体調が悪いときは休養すべき」「リモートでの会議は非常に効率的でありシステム的にも可能」などを取り入れ、アップデートされたものであるべきなのです。

このことが何を意味するかといえば、わたしたちがイメージする「あるべき世界」の姿を刷新することが求められているということです。

深く考えずに、企業や学校、文化といったものをコロナ以前の状況に戻そうとすることはお門違いであるということなのです。

また、このことは別の意味でも重要です。

ユヴァル・ノア・ハラリの「ホモデウス」によれば、質量換算すると、地球上の大型生物の9割以上(人間27%、家畜64%)が人間界のものであるといいます。

世界人口がまだしばらくは上昇していくことも考えれば、これまで以上にわたしたち人類の活動拠点が自然を切り開いて広がっていき、野生動物の世界から新たな感染症(これまでの例を挙げれば、コロナやエボラ、エイズなど)がやってくる可能性はさらに高まるということです。

このことを踏まえれば、コロナ禍に生まれたPandemic-readyな生活空間の必要性は、これからも標準的な価値観として受け入れられるべきでなのです。

また、これまでのやり方では成長の前に地球がもたないということも、コロナ後の世界を構想するうえで重要です。

コロナの粛清でも気温は0.01度しか変わっていません。抜本的に社会を変革しないことには、地球(正確には、わたしたちの活動空間としての地球)がもたないのです。

「自分は逃げ切れるから」という「将来世代への課題の先送り(時間的転嫁)」を見直しましょう。

コロナの襲来は、わたしたちが新たな世界を構想し実現していく「きっかけ」として捉えるべきなのです。

まとめ

「日常を取り戻す」とはどういうことなのか。

「コロナ後の世界」をどのように構想しうるのか。

この2つの問いは、今わたしたち1人ひとりに突き付けられています。

コロナの襲来は何を意味するのか。意味を与えるのはほかでもない、わたしであり、あなたなのです。

100年後の未来、この歴史的な状況が、「人類にとってポジティブな転換点であった」と語られるためにはどうすればよいのか。

さあ、今こそ、「今を生きるわたしたち」のパラダイムシフトが必要です。

【参考文献】

「ビジネスの未来」山口周 2020

「シンニホン」安宅和人 2020

「ホモ・デウス(上・下)」ユヴァル・ノア・ハラリ 2018

「人新世の「資本論」」斎藤幸平 2020

コメント

タイトルとURLをコピーしました